読書に関してよく友人や後輩と本の話をしていると、私が「この本を読んだよと」言うと、直ぐに「私も読みました」と言ってくる人が居る。
「どんな本だった」と聞いても、明快な返事が返って来ない。
私も以前は、ただ読んだという事実に納得し、満足していたように思う。
本から得た感動や知識などは、読んだ当初はあったのかもしれないが、暫くすると忘れてしまいます。
私は感銘を受けた本は、小説を除いて、要旨を自分なりにまとめることにしています。
そうすることで自分の肥やしになると思います。
ただ非常に時間と労力を要する作業でもある。
機会あるごとに要旨を読み返し、時には本を取り出して再読する。
それと感銘を受けた本は、他人にも勧めたりもする。
そうすることにより、自分の理解度を増すことが出来ます。
最近、キンドルなどの電子書籍で読まれている人も多く見受ける。
彼らに言わせると、どこへでも何冊でも持ち歩けるし、本棚も必要ないとのこと。
私は古い人間なのか、どうしても受け入れられない。
読んだ本は出来るだけ、自分の部屋の本棚に飾っておきたい派なのだ。
まずは記憶に残っている小説より
昔は小説をよく読んでいた時期があったが、最近はあまり読まなくなっている。
ただその中でも、記憶に残っている本が何冊かあり紹介させていただきます。
昔から小説は一冊読んで気に入ると、その作家の本を買いあさって読む傾向がある。
高校時代は、青春(恋愛)ものにあこがれて読んだ本です。
石坂洋二郎:小説を自分で買い、最初に読みだした本として、青い山脈、陽のあたる坂道等がある。
青い山脈は、女子高を舞台にした男女交際に関して書かれた本で、新聞に掲載され大ブームになり映画化もされました。
陽のあたる坂道も映画化され、主演が石原裕次郎と北原美枝で、人にはいえないような秘密を抱え、そのことに対して悩み苦しむ。
それでも前向きに生きる姿が描かれております。
その当時は、これらの映画は見ておりませんでしたが、かなり経ってからテレビで見ました。
石原慎太郎:著者は今年の2月2日に永眠されましたが、遠い昔の記憶に「青春とはなんだ」という本が残っております。
そして当時テレビでドラマ化され、欠かさず見ていた記憶があります。
自分は、高校のサッカー部に所属し、苦しくも楽しい高校生活をおくることができたのも、この本の影響があった気がします。
大学時代に、自分の知らない世界を描いた本に興味を持ち、読んだ本
五木寛之:「青春の門」をきっかけに、五木寛之の小説は出版されると直ぐに買い、読み続けていた。
青春の門は、主人公は九州の筑穂炭鉱生まれで、とても厳しい生活の場面から、物語は始まる。
その後、東京に出て来て早稲田大学に進学し、中野周辺に下宿する。
自分の生地が中野で、本の中にたびたび中野が登場しますが、自分の知っている世界とはかけ離れたものでした。
何故かお金に困った主人公が、自分の血を売ってお金に換える「売血奴」という言葉が、今でも記憶に強烈に残っています。
ただこの本は、今の私の歳で読むものではなく、まだ社会に出る前に読めたことが良かったのかもしれない。
五木寛之の本はその後数十冊は読んでいるが、なぜか記憶に鮮明に残っている本に「内灘婦人」がある。
今はほとんど知られていない本ですが、自分の人生で初めての読んだ、主人公の有閑マダム的な暮らし、その官能的シーンの描写が私の記憶に強く残っている。
作者がこのことを読んだら、お前は何を考えて読んだんだと叱られそうですが。
柴田翔:「されどわれらが日々」と言う本ですが、大学時代に読み人生について色々考えさせられた重たい本でした。
調度この本を読んだときは、世の中は学園紛争まっただ中でした。
自分の通っていた大学でも「マルクス青年同盟」と言う団体が、構内に自分たちの拠点を作ろうと毎日押し掛けてきておりました。
構内ではそれに対抗する、「理工闘意」と言うグループが立上げり、ゲバ戦を繰り広げておりました。
彼らはマル青同に立ち向かう構内のヒーロー的な存在であり、我々も拍手で応援していたのを思い出します。
大学四年間で学校封鎖が二度ほどあり、授業も無く、試験もレポート試験に変わってしまったことを思い出します。
何も考えずに読めて、ほのぼのと心が癒された本
畑正憲:「ムツゴロウと愉快な仲間たち」を呼んだのをきっかけに、仕事に疲れた時など、ムツゴロウの表題の本を買ってよく読みました。
今では動物をテーマにしたテレビ番組をよく見ますが、その当時はこれらの本を読んで癒されていたと思います。
著者が実際に作り上げた、北海道の動物王国にあこがれを持って、読んでいたと思います。
北杜夫:「ドクトルマンボウ航海記」など、ドクトルマンボウ・シリーズも気軽に読める本としてよく読みました。
作者が船医として乗り込んだ船で訪れた、さまざまな国々の出来事などを記した航海記です。
当時の私は海外などまったく行ったこともなく、すべて新鮮な出来事としてでした。
椎名誠:「あやしい探検隊」のシリーズも、気軽に読めるものとして愛読しました
椎名誠本人が、探検、冒険に心を奪われ、タクラマカン砂漠、マゼラン海峡、アリューシャン列島など、辺境の地を旅しており、それらの体験記をおもしろ可笑しく書いたものでした。
私も子供の時は、小学校の卒業アルバムに、成りたい職業に探検家と書いていました。
実際には私自身が出来ないことを、著者は仲間たちと冒険を実行し、そのことを紀行文として書いており、憧れがあったのかもしれません。
人生に影響を与えた本
城山三郎:約40年以上前に読んだ本が「雄気堂々」で、今まさにブームになっている渋沢栄一の歩んできた人生を描いた本です。
舞台は激動の幕末、攘夷思想に傾倒した栄一は幕府に攘夷の決行を促す計画を立てるが、計画は頓挫する。
その後、パリで開催された1867年万国博覧会に出席する。
欧州の地で大政奉還を迎え、日本へと帰国する。
大隈重信に誘われ大蔵省へ入省することになり、新しい国づくりのために奔走する。
その後は役所を辞め、日本で始まった株式会社の設立のための活動を開始する。
この本を読んだときには、世の中にはとんでもない人生を歩んだ人が居ることに驚かされ、自分も何かしなければと思わされた。
この本をきっかけに城山三郎の日本経済に関す本を、読み漁ったことを思い出します。
外国の小説
ジェフリー・アーチャー:私の一押しの本は「ケインとアベル」です。
読んだのは30年以上前ですが、取りつかれたように読みふけった記憶がよみがえります。
後にテレビドラマとして日本でも上映された。
物語は、1906年ポーランドとアメリカで二人の男の子が生まれるところから始まる。
ポーランドに生まれたアベルは、貧しい家に引き取られ実の子同然に育てられた。
彼は学校では優秀な成績を修めたので、ロスノフスキ男爵の子息の学友として男爵の城で教育を受けるようになった。
アメリカに生まれたケインは銀行家の父を持ち、生れ落ちたときから上流階級の家で育った。
生れも境遇も全く違う二人が、ある日突然巡り合うことになるが、両者の対立は凄まじいものとなる。
二人の関係が判明した結末では、大どんでん返しが待っている。
この本を読んだ後は、本屋でジェフリーアーチャーの本を見つけては、読みまくりました。
終わりに
私はここ二十年間は、小説のたぐいはほとんど読むことが無くなってしまいました。
それに変わって、仕事に関係するビジネス書ばかりを読み続けてきました。
サラーリーマン生活を終えた今、改めて過去に読んだ小説の中で、記憶に残るものを拾い出してみました。
仕事にも時間にも追われることもなくなった今、今回あげた小説等を読み直すのも良い機会かと思う次第です。
次回は小説ではなく、私の人生に本当に影響を与えた本を、じっくり紹介したいと思いますので、乞うご期待ください
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