読書に関して(その二)
今までの人生で、恐らく何千冊という本を読んできたのだろう。
この年になるまで、過去に読んできた本を、振り返ったことはあまりなかったと思う。
自分の人生に影響を与えた本と言うテーマで、記憶を遡ることにした。
何冊かの本が頭に浮かんで来るわけで、今回はその中で他人に勧めたくなる本を、私の独断と偏見で紹介することにした。
但し、いずれもベストセラーになった本なので、もう既に読まれた方も多いと思います。
まずはジャンル別に、紹介する。
・仕事に役立った本
1.企業参謀 大前研一
2.Goal ゴールドラット
・人生の道しるべとなった
3.七つの習慣
仕事に役立った本
①企業参謀(戦略的思考とはなにか):大前研一著
大前氏については、今更説明する必要は無いと思いますが、早稲田大学、東京工業大学大学院、マサチュ―セッツ工科大学で原子炉の設計で博士号を取得されおります。
理工系出身でありながら29歳でアメリカのトップ経営コンサルタントであるマッキンゼー社に入社されます。
この本は、大前氏が入社当初に「経営とは何か」を仕事をしながら学んだことを、メモしたものだそうで、初版は1975年で、ベストセラーになったわけです。
私が最初に読んだのは1996年で、その当時私はインドネシアに赴任しており、この本を読んで、まさに目からうろこが落ちるような衝撃を受けたわけです。
その時は、私は総勢40人の現地の会社を任されており、日本人は私一人でした。
さっそくこの本から学んだ損益改善の取り組を、実際の仕事で使ってみることにしました。
損益改善とは、最終的には ①売上を上げる ②売価をあげる ③コストを下げる の三つに行き着くわけです。
当たり前のことのように思われますが、これらを行う手法すなわち戦略を、教授してくれたのがこの本でした。
まずは日本人の得意種目である③コストを下げることに挑戦してみました。
以前でしたら、自分の頭に考えた項目に関して取り組んでいたわけです。
ただ今回はこの本から学んだ手法に基づき、原価構成をすべて拾い出し、原価低減効果の一番大きな項目に焦点を当てて行いました。
自分の部下達には、データーに基づいた戦略の考え方を理解してもらい、実行しました。
結果は予想以上で、大きく損益改善することが出来、大変満足したことを思い出します。
その後も、シンガポールンの会社でも、最後は日本へ帰ってからも繰り返し取り組み、成功いたしました。
この本はかなり古い本ですが、今でも充分通用する内容だと思います。
②Goal:エリヤフ・ゴールドラット
二冊目がユダヤ人の物理学者ゴールドラット博士が書いた「Goal」と言う本で、1984年にアメリカで出版されました。
工場を経営していた友人から生産スケジューリングの相談を受け、解決法として生産スケジューリングのソフトを開発したのが、始まりだそうです。
当初はコンピューターソフトの形で販売を試みたのですが、思うように販売できなかったそうです。
そこで本理論を、本に書いて出版することにするのですが、難しい専門書形式ではなく、誰にでも分かりやすく、尚且つ面白い小説形式で書いたわけです。
出版されると、瞬く間に売れベストセラーになったのです。
しかしこの本は、2001年まで17年間日本語での出版を許可しませんでした。
当時の日本の製造業は絶頂期にあり、世界の覇者と言うにふさわしい状況にありました。
ゴールドラット博士は、本理論は日本に採用させるのではなく、日本以外の国、特に米国の競争力を高め、当時の日本との貿易不均衡を解消させようと思ったそうです。
本の内容
この本の中で、企業の目的は「現在から将来にわたって、お金を儲けることである」と書かれております。
その目的を成し遂げるための合理的思考プロセスを、生産管理の世界を取り上げ、説明しているわけです。
TOC(Theory of Constraints:制約理論)
工場の生産プロセスを最適化するための方法を書いています。
1.ボトルネック(制約)を見つける
ボトルネック(制約)とは、企業や組織の能力を妨げている物のこと。すなわち目標を達成するうえで存在する「好ましくない事実」をおこしている、根本的な原因のこと。
2.ボトルネック(制約)を最大限に活用する方法を見つける
ボトルネック(制約)となっている部分の処理能力が、業務の全体パフォーマン スを決めている場合が多い
3.他のすべての工程を、2.の結果に従属させる
4.ボトルネック(制約)の能力を高める
ボトルネック(制約)部分の処理能力を高めただけ、全体の処理能力も高まる
5.ボトルネック(制約)が解消されたら、最初の1.に戻る
新しいボトルネックを探すわけです。
これらのプロセスを繰り返すことにより、全体の能力が向上し続ける
「工場の生産性は、ボトルネック(制約)工程の能力以上には向上しない」
ボトルネック(制約)に集中して改善することで、業務の改善が達成できる。
一つの例として、組織を一本の鎖にたとえ、強度を鎖の価値と考える。
鎖を引っ張ると、一番弱い部分の鎖が切れてしまう。
一番弱い部分以外の鎖を強くしても、鎖全体の強度は上がらない。
すなわち、どの部分の鎖を改善するかが重要である。
私見
一見この本は、工場の生産方式改善に関してのみ、書かれているように思われる。
しかし全く違って、我々の日常生活におけるいろいろな場面に応用できると考えます。
本自体はかなり厚く読み応えがありますが、読む価値は絶対あると思います。
この本の続編として、全部で4冊出ています。
①マーケッティングについて書かれた「ゴール2」
②「クリティカル・チェーン」、副題「なぜ、プロジェクトは予定どうり進まないのか?」
③「チェンジ・ザ・ルール」、副題「なぜ、出るはずの利益がでないのか」
④「ザ・チョイス」、副題「複雑さにまどわされるな」がある。
どれもかなり厚い本ではあるが、読む価値はあると思います。
私は、ゴールドラット博士の本がダイヤモンド社から出ると、直ぐに購入し愛読しておりましたが、2011年6月に博士はイスラエルの自宅で亡くなりました。
今でもアマゾンの本の購入サイトのビジネス書で検索すると、驚くことに経営戦略の分野で「ザ・ゴール」が出てきます。
③7つの習慣:スティブン・R・コビィー著
副題:個人、家族、会社、人生のすべて—―成功には原則があった!
この本は前のビジネスに関する二冊とは違い、人が生きていく上での大切な道しるべとなる本だと思います。
コビィー博士は、「成功」と言われるような人生には、その裏付けとなる原理原則がある。
その原則を体得し人格に取り入れる以外に、人の真の成功を達成し、永続的な幸福を手に入れる方法はないと教えている。
人生の扉を開く「七つの習慣」
習慣と言うものが私たちの生活に決定的な影響を及ぼしている。
習慣によって無意識のうちに生活のパターンが決められ、人格が育成される。
習慣の三つの要素
習慣は、知識とスキルとやる気という三つの要素からなっている。
知識とは、「何をするか」または「なぜそれをするか」という二つの質問に答えてくれる。
スキルは「どうやってするか」を示すものである。
やる気は動機であり「それを実行したい」という気持である。
生活の中で習得を確立するためには、この三つの要素がどれも必要である。
相互依存への道
「七つの習慣」は、つながりのない行動規範ではない。それは正しい原則に基づいた順序立った、極めて総合的な、私たちの生活や人間関係の効果性を向上させるアプローチである。
この「七つの習慣」を身につけることにより、次第に依存から自立へ、そして自立から相互依存へと成長していく。
依存している人は、欲しい結果を得るために他人に頼らなければならない。
自立している人は、自分の努力によって欲しい結果を得ることができる。
そして、相互依存をしている人々は自分の努力と他人の努力を引き合わせて最大の成果を出すことができる。
「七つの習慣」のうち第一、第二、第三の習慣は、自己克服と自制に関連した習慣であり、依存から自立へと成長するするためのプロセスである。この三つは人格を育成する核とも言える私的成功の習慣である。
私的成功は必ず公的成功に先立つものであり、種を撒く前に収穫することができないように、このプロセスを逆にすることは絶対にできない。
真の自立を達成するにつれて、効果的な相互依存の土台ができあがる。
チームワーク・協力・コミュニケーションなど、ある意味では個性主義的ともいえる公的成功にかかわる第四・第五・第六の習慣が、この人格の土台の上に築かれるものである。
第七の習慣は再新再生の習慣であり、肉体、社会・情緒、知性、精神という人生における四つの基本的な側面において、定期的かつバランスよく改善を図る習慣である。
第一の習慣 主体性を発揮する
問題は自分の外にあると考えるならば、その考えこそが問題
私自身以前から、人間は言い訳の動物であると考えてきた。
何か失敗したり、上手くいかないことがあると、外に原因を探していた。
すなわち自分自身に対する言い訳を見つけ、だからこんな結果になってしまった
のだと納得する自分が居た。
何かに失敗した時、前日に友人が無理やり飲みに誘ったからだとか、風邪をひいていたからだとか、自分を納得させる言い訳を探すのである。
これこそ、ここで言っている、問題は自分の外にあるの間違った考え方である。
本当にその状況を改善したいのであれば、コントロールできる唯一のものー-自分自身ー-に働きかけることである。
第二の習慣 目標を持って始める
目的を持って始めるということは、目的地をはっきりさせてから旅立つことである。
目的地を知ることで、現在地もさらによく分かるようになるし、いつも正しい方向に向かって歩み続けることができるようになる。
目的を持って始める、最も簡単で大きな効果をもたらす方法のひとつは、ミッションステートメント(個人的な憲法、または信条)を書くことである。
その中で自分はどうなりたいか、何をしたいのか、そして自分の行動の基礎となる価値観や原則を明らかにする。
第三の習慣 重要事項を優先する
大事を小事の犠牲にしてはならない
私たちの時間の過ごし方は、基本的に四つの領域に大別することができる。
活動を定義する二つの軸は、緊急度と重要度である。
この中で優先するべき重要領域は、第二領域である。
第二領域に集中することは、効果的な自己管理の目的である。
緊急ではないが、重要な事項を取り上げており、人間関係づくり、ミッションステートメントを書くこと、長期的計画、予防保全、準備などは、すべてこの領域に入っている。
第四の習慣 Win-Winを考える
Win-Winは、すべての関係において、常に相互の利益を求める心と精神のことであり、お互いに満足できる解決策を打ち出すことである。
Win-Winによって得た解決策では、すべての当事者が心から納得しており、合意した行動計画を実行しようと決心している。
Win-Winは、人生を競争ではなく、協力する舞台とみるパラダイムである。
第五の習慣 理解してから理解される
私たちは、急いで問題の中に飛び込んで、何かのアドバイスで問題を素早く解決しようとする傾向が、極めて強い。
相手に対して、本当に影響を与えることができるかどうかは、あなた自身が模範を示すこと、つまり日頃どう行動しているかにかかっている。
信頼を築き、相手が話せるよな人格の土台の上に、感情移入の傾聴のスキルを積み上げて行かなければならない。
ほかの人の話を深く聴くには、強い安定性が必要である。それは、影響され傷ついたりする可能性が生じるからだ。
多くの人々にとって、この「理解してから理解される」ことは、「七つの習慣」のうち、最も有意義かつ即効性のあるものである。
第六の習慣 相乗効果を発揮する
相乗効果は、人生において最も崇高な活動である。残りの習慣すべてが、身についているかどうかのテストであり、またその目的でもある。
今までの話してきたすべての習慣は、相乗効果の奇跡を作り出す準備に過ぎない。
相乗効果の本質は、相違点、つまり知的、情緒的、心理的な相違点を尊ぶことである。
第七の習慣 刃を研ぐ
第七の習慣は、あなたの持つ自分自身という、最も大切な資源を維持することである。
つまり自分の中にある自然から授かった、四つの側面「肉体的側面」「精神的側面」「知的側面」「社会・情緒的側面」のそれぞれを再新再生させることである。
肉体的な側面の再新再生を図る目的は、仕事をし、環境に適応し、より人生を楽しむ能力を高めることである。
精神的側面とは、自分の核であり、中心であり、価値観に対して決意することである。
これは極めて個人的な領域であり、かつ、人生において最も大切なものである。
知的能力の開発は、そのほとんどが正式な教育によってなされる。
しかし、一度学校を卒業してしまうと、多くの人の知力は弱体化の道を辿る。
つまり、真剣な読書をしなくなり、自分の専門を超えた新しい分野の探求も、分析的な考察もせず、書くことさえもしなくなる。
社会的側面と情緒的側面は、互いに結びついているといえる。
なぜなら、私たちの情緒的な側面は、基本的にはほかの人との関係によって育成され、表現されるものだからである。
終わりに
今回紹介した三冊の本はベストセラーになった本であり、もう既に読まれた方も多いと思われます。
それぞれがかなり厚い本で、内容も含め読み応えのある本です。
私はもう既に一線を退いた身ではありますが、私と同じ境遇の方でも、改めて読んでみる価値はあると思います。
私は今の現役で働いている人たちにも、これらの本を読むように勧めております。
但し、前回のブログに書きましたが、本はただ漠然と読むのでは無く、自分の仕事や生活に反映させるべきであり、自分自身の肥やしになるような、読み方を推奨しております。
まだまだお勧めしたい本は、多々ありますので、別の機会をお楽しみにして下さい。
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